僕が通訳案内士にどうやって合格したか

僕が通訳案内士にどうやって合格したか

試験について

外国語に関わる唯一の国家資格になる「全国通訳案内士試験」という資格試験があります。

外国語を使って来日する外国人観光客をガイドすることを目的とした資格試験ですが、目的の資格だけでなく、日本について学ぶ意味でもとても価値のある試験です。
僕は英語と中国語の二か国語で合格していますが、ここでは最初に受験した英語でどのようにして勉強したかを書き残したいと思います。

全国通訳案内士試験とは

外国人観光客に外国語を使って日本をガイドする国家資格「全国通訳案内⼠」のになるための資格試験です。

年一回実施。筆記試験が7月にあり、その通過者のみ12月の口述試験に進むことができ、翌年2月に最終の合格発表があります。

全国通訳案内⼠の資格は、その登録者のみが有償の通訳ガイド業務を行うことができる業務独占資格でした。しかし2017年に法律が改正されて、現在は無資格者でも有償の通訳ガイド業務をすることができるようになりました。ただし「全国通訳案内⼠」の名称は有資格者のみが使用することができます。

対象の外国語は、英語・フランス語・スペイン語・ドイツ語・中国語・イタリア語・ポルトガル語・ロシア語・韓国語・タイ語です。

2023年度の受験料は、11,700 円でした。(一か国語)

※実施内容は年度により変更される可能性があります。詳細は実施機関のWEBサイトにてご確認ください。
●全国通訳案内士試験概要(政府観光局)
https://www.jnto.go.jp/projects/visitor-support/interpreter-guide-exams/

筆記試験の科目(試験時間)
  • 外国語(90分)
  • 日本地理(30分)
  • 日本史(30分)
  • 産業・経済・政治及び⽂化に関する⼀般常識(20分)
  • 通訳案内の業務(20分)
主な科目免除(英語)

筆記試験には他資格試験を持っていれば一部で科目免除を受けることができます。
また、前年度に合格した科目については翌年度は科目免除となります。

英語
 ・英検一級
 ・TOEIC(以下①~④のいずれか)
  ①Listening&Reading Test 900点以上
  ②Speaking Test 160点以上
  ③Speaking&Writing Testの内、Speaking Test 160点以上
  ④ Speaking & Writing Test のWriting Test 170点以上

日本地理
 ・総合旅行業務取扱管理者
 ・国内旅行業務取扱管理者

日本歴史
 ・歴史能力検定日本史 2級または1級

※上記は主なものです、詳細は必ず実施機関のWEBサイトにてご確認ください。

僕が受験した経緯など

なぜ受験したか

受験動機ですが、
 ①英検一級のあとの語学学習のモチベーション
 ②試験内容に興味がある(日本のことが好き。日本のことに知識を深めたい。)
 ③語学唯一の国家資格というあこがれ

本来は、実際に通訳ガイドを仕事にする前提があるべきなのでしょうね。
ただ、日本文化を外国の方に紹介したいという思いはあります。せっかく登録もしましたし少しづつですが今はガイドの勉強もし始めました。
最初から仕事を前提にした場合には、勉強の仕方も変わってくるかもしれません。

合格までかかった期間

英検一級に受かってから受験をして、2年(2回)で合格することができました。
日本史だけは受験の一年ぐらい前から少しづつ勉強をしていました。
もちろん英検一級を持っていないと受験できない訳ではありません。

1年目:
 <一次筆記>
 科目免除:「英語」(英検一級)
      「日本地理」(国内旅行業務取扱管理者)
 受験科目:「日本史」「一般常識」「通訳案内の業務」

 結果:「日本史」→〇
    「一般常識」→×
    「通訳案内の業務」→〇
 「一般常識」の不合格で、一次試験通過ならず。

2年目:
 <一次筆記>
  受験科目&結果:「一般常識」のみ→〇
 <二次口述>
  結果:合格!

できる限り他の資格で科目免除をねらったほうがいい

僕は「英検一級」で英語、それと「国内旅行業務取扱管理者」で地理の2科目が免除になりました。
結局それでも初年度は一般常識科目に落ちて、一次試験を通過することができませんでした。
実は日本史も歴史検定を2回受験しましたが、歴検2級は通訳案内士の問題よりも難しく、合格することができませんでした。

以下の理由で、科目免除を狙ったほうがいいと考えます。

■試験時間がタイト
筆記試験を受けて実感したんですが、想像以上にきつい!
試験時間だけを見ると、日本史が30分、一般常識が20分など短く見えますが、問題数が各々30問、19問で1問を1分ほどで読んで解くスピードが必要で時間がタイトです。それが科目数が多いと息をつく暇もない感じになります。

■難易度は年度により異なる
23年度の受験体験記を見ましたが、一般常識問題が例年より難しかったようです。作る側は同じような平均点になるように作成していると思いますが、年度によって難易度の違いはでてきます。自分の好きな問題かどうかもありますね。
これが他資格試験での免除は基本的に永年なので、取得すればその科目は勉強する必要がなくなります。さらには、その分の時間を他科目の勉強にあてることができます。

■試験は一年に一回しかない
合格するまでこのプレッシャーがありました。いつ仕事や色んな事情で勉強時間の確保が難しくなるかも分からず。巡り合わせが悪いとせっかく一度合格した科目も受験し直しとなり、場合によってはその悪循環に陥ってしまう可能性すらあります。
そういったことを防ぐ意味でも一科目でも多く科目免除があると精神的にも楽だと思います。

■その他
地理の科目免除になる「国内旅行業務取扱管理者」は受験をお勧めしたいです。(勉強する余裕がある方は「総合・・」の方でも)
受験科目を減らす目的だけでなく、国内旅行について勉強できますし、僕は参考書一冊で3か月ぐらいの勉強でとれましたので、勉強する時間に見合う価値があると思います。

「一般常識」をあなどるなかれ

「一般常識」と聞けば普段からニュースを見ていれば、勉強は必要なさそうなイメージをお持ちではないでしょうか。僕自身がそうでした。
何も勉強しなくても過去問を解いてみれもなんとなく合格点前後が取れている感じでした。それに、日本史の勉強ににどうしても時間が必要で、「一般常識」は頻出の観光白書のデータをある程度頭に入れて試験に挑みました。
それが実際に試験では合格点に2問ほど足らず、たった2問ながらその不合格で一年後まで持ち越しになりました。

「一般常識」と言ってもいわゆる一般常識ではなくて、旅行業界の一般常識なのです。
また、この科目が難しいのは、頻出の観光白書以外には勉強方法がよく分からないところです。

一次筆記 勉強したこと

日本史

大学受験は世界史選択でしたし、学生時代は昔の話で、日本史はやり直し再勉強でした。
幸い歴史自体が嫌いではありませんでした。ただ、ある程度は知ってるつもりでしたが、いざ勉強を始めてみると実際は知らないことだらけでした。
以下は主に使った教材です。

  • 「詳説日本史 日本史B」山川出版社
    高校の日本史で定番の山川の教科書。日本史の勉強は久しぶりで読み物としても面白く感じました。
    ただ読むのは面白いのに、なかなか内容を暗記できませんでした。年齢のせいかな。
  • 「日本史B」三省堂
    どこで知ったかは忘れましたが、山川の前にこちらの教科書を読みました。教科書取り扱い書店さんで取り寄せしてもらいました。(山川の教科書は大型書店に置いていました)
    山川の教科書より簡潔に書かれていまして、この教科書でも合格点は取れると思います。
  • 「一度読んだら絶対に忘れられない 日本史の教科書」山﨑圭一著/SBクリエイティブ
    教科書だけでは流れが分かりづらく、この本は教科書ではつかみにくいその辺りが分かってよかったです。サブとしてよい一冊かと思います。
  • YouTubeの歴史系チャンネル
    当時よく見ていたのは「YouTube高校 / 日本史・世界史」というチャンネルです。やはりビジュアルがあると面白いですね。こちらのチャンネルはどの時代も網羅していて動画の長さもちょうどよく見たり寝ながら再生リストを流していました。

その他、大学受験のやり方で、一問一答などもトライしましたが難しくて使えなかったです。。

⼀般常識

一年目に落ちて、合格されている方の勉強方法を検索して参考にしました。
そうするとある方は就活生が使っているような一般常識の本を挙げていましたので、僕も日経キーワードなど新聞社から出ているような時事に関する本を数冊買って読みました。
試験と関係なく教養としても勉強して決して損するものでもありませんのでそれはいいのですが、試験に役立ったかは結局よく分かっていません。
正直いいますと結局何の勉強法がいいのかは今もって分かっていないんです。。

例えば、僕が受けたときの問題で、東京オリンピックにちなんで、1964年の選手村の場所を問う問題がありました。それは一般常識というよりも、むしろクイズ年の差なんてだと思いませんか?(笑)

間違いなく言えることは、「観光白書」のデータの必要個所は覚えておくことは必須です。

  1. 過去問を解く
  2. 過去問の中から「観光白書」から出題される問題は、その該当箇所を最新の「観光白書」から覚える
  3. 普段のニュース記事から旅行業や来日外国人の動向にかかわりそうなものをチェックする
  4. ハロー通訳アカデミー等のサイトや、ネットの口コミなどから問題傾向や他の受験生の勉強法を調べる

といったところでしょうか。
いわゆる「一般常識」で受かるとは思わない方がよろしいかと思います。

通訳案内の業務

「全国通訳案内士試験「実務」合格! 対策」三修社
僕はこの一冊しかしておらず、それで合格点が取れました。
年度によって変わる類の科目ではないので、参考書一冊と問題傾向をチェックしつつ、余裕があれば実際のガイド業務に関する本を読むぐらいでいいのかと思っています。

二次口述試験 使った参考書・勉強したこと

口述試験の形式

受験番号に応じて、受験日のうちのどの時間帯で受験するかまたその時間帯の中でもさらにグループが分けられます。
試験時間はおよそ10分。
試験官は二人。一人がネイティブ、もう一人が日本人。
入室すると席に着くように促されて、名前や生年月日など簡単なことを英語で聞かれます。
試験内容は、

  1. プレゼンテーション問題
    渡される紙に、3つのテーマが日本語で書かれています。それを30秒で選んで内容を考えます。
    それから2分ほどでその内容について英語で説明します。

    テーマに何が来るかは完全に運です。ただ、各回に一つは一般常識レベルで答えられるテーマがあるように見えます。
    やはり緊張しますよね。。いろいろ準備してもその場にいると頭が真っ白になりました。
    ただし、オンライン英会話でやり取りをずっとしていましたので、瞬発力で答えることができました。
    難しいことを話そうとするんではなくて基本的な言い方で分かりやすい英語を使うのがよいのかと思います。
  2. プレゼンテーションの後の質問
    ネイティブの試験官から、プレゼンテーションの内容についていくつか質問があります。
    大切なのは、会話のキャッチボールをすることです。
  3. 通訳問題
    日本人の試験官が日本語で内容を読み上げそれを英文に翻訳します。
    メモ用紙や筆記用具は机に用意されていますので、メモを取ってもかまいません。

    対策の仕方は色々あると思いますが、僕は単語単語をできる限りメモをして、それをつなげて英訳しました。結局は、接続詞や文法など基礎力がどれだけ大切かということだと思います。
  4. シチュエーション問題
    翻訳問題に関連してガイドすることを想定したシチュエーション問題です。
    状況を日本人の試験官が日本語で伝えてくれます。例えば、僕が受けたときは京都についてで、夫婦と二人の子供の家族の旅行者で、子供がお寺に飽きてしまってお寺に行きたがらないがどうするか、といったことでした。
    ちょっと僕は間違った方向に行こうとしたと思うのですが、、「お寺も各々背景があるのでそれを伝えたら面白く感じるはずです」のような。
    試験官の方が、「それでも子供はお寺よりサムライとか忍者に興味があるんだよ」と誘導してくれたので、何かを悟って「それではお寺ではなくて忍者にまつわる場所にいきましょう」とか言った記憶があります。
    そんな訳で偉そうにいえませんが(汗)、けっきょく大切なのは会話のキャッチボールをすることと、いかに相手のことを思ってあげているかそのホスピタリティを見せることだと思います。
必要だと思うもの

僕が読んだ合格体験談は、日本に関する様々なトピックについて英文を覚えて、覚えた英文を録音して確認して、人に聞いてもらったり、何度もシミュレーションしてトレーニングを重ねたりとストイックに準備された方のものが多くて、頭が下がる思いでした。
またここまでしないといけないのと考えると、気が遠くなる思いもしました。

ただ、合格して思うのは、単に試験に合格することが目的であればそこまでしなくても合格できると思います。
もちろん実際にガイド業務につく場合は、その努力と知識は必ず生きてくるものと想像されます。

僕が一番大切なことだと考えることは試験の内容以前に、基本の会話のキャッチボールができているかどうかです。

受験者の中には、もしかすると英会話はほとんどしたことがないという方もいるかもしれません。
今はオンライン英会話があります。これを使わない手はありません。今は訳があり休止していますが僕も以前は5年間ほぼ毎日25分のレッスンを受けていました。最初はめちゃくちゃ緊張しましたが、あんなにありがたいものはないと思っています。

  • 基本的な会話力
    英語を使って言葉のキャッチボールができるか。
    対策はオンライン英会話がお勧めです。
  • 基本的な英作文力
    日本語の文章を聞いて英訳して口述する問題があります。
    対策は大学受験向けの参考書などでとっつきやすいものがよいかと思います。
  • 日本の観光地や文化に関する知識
    知識として知らなければ答えられません。まずは日本語で言えるかどうかだと思います。
    基本的な英会話・英作文力があればそれを英語にすればよいので。
  • ホスピタリティを表現すること
    これは重要だと思います。自分が海外を旅行した際に親切にしてもらって嬉しかったことなどを思い出して、遠くからはるばる日本に来てくれた人にできる限りのことをしてあげたい、という気持ちを表すことです。
おススメの参考書・教材
  • 「見る・知る・遊ぶ 英語で紹介する日本 Experience Japan」松本美江/ナツメ社
  • 「改訂版 英語で日本紹介ハンドブック」松本美江/アルク

    試験の教材として一番大切なのは上に上げた2冊のような簡潔で分かりやすいものと思います。

    さらに進めて
  • 「英語で説明する日本の観光名所100選」植田一三 , 上田敏子, 祐田直子, 中山紗里/語研
  • 「英語でガイドする日本――海外ゲストが行きたい東日本の名所」松本美江/ジャパンタイムズ出版
  • 「英語でガイドする日本――海外ゲストが行きたい西日本の名所」 同上

    英語で日本を紹介する類の本は他にもいろいろ出ていますので、お好みのものを選べばいいと思います。
    実際には僕も上に挙げた以上の本を読みましたが、例えば内容が難しいもの、植田一三さんの著作などは読み物としては面白かったのですが、僕はその内容を試験で使えるレベルではありませんでした。
    あとは使っていないのですが、三修社の二次口述用の参考書なども良さそうです。

その他

他の受験者さんの情報は参考にしても、惑わされない

今はネット掲示板・SNS・ブログなどで、色んな受験者さんのコメントや体験記が見れますね。
でも、人それぞれ状況やバックグラウンドが違いますので、あまり惑わされないことも必要かと思います。
例えば、3か月の勉強だけで日本史科目は取れた、という人がいたとしましょう。でもその人はもともと日本史が好きな人かもしれない、大学受験で日本史を選択していたかもしれない、一日3時間は勉強時間がとれる人かもしれない…etc

ハロー通訳アカデミーさん

受験者で「ハロー通訳アカデミー」を活用していない人はいないんじゃないかとすら思えます。
無料で様々な情報を提供されていて、合格不合格体験記が過去の分まで閲覧でき、もはや受験者のポータルサイトのような存在です。
僕もこちらのサイトの情報はとても参考にさせてもらいました。とても感謝しています。
https://www.hello.ac/

試験合格後の登録について

試験合格後に全国通訳案内士を名乗るには都道府県に登録が必要です。
以下は私が登録した際のメモになります。(お住まいの都道府県により異なる部分があるかもしれませんので詳しくはご確認ください)

英語と中国語で合格していますが、先に英語に合格したものの
1.通訳士として仕事をする予定がないことと
2.登録には庁舎に行く必要があり一回で終わらせたい
3.登録料も一つで済む(と思った)(←これは間違いでした!
との理由から、中国語に受かってからまとめて登録することにしました。

中国語の合格発表があってから、
ネットで大阪の登録について調べると大阪府庁の担当まで電話連絡するように書いてあったので電話しました。
登録の来庁は予約制になっているとのことで自分が来庁できる日時を決めて予約しました。

登録より事前にしておかなければいけないことは色々ありまして、、

1.ウェブページから各種書類をダウンロードして印刷して記載
  →もうプリンタを持っていない方も多いとは思いますが、そうするとコンビニでしょうか。。

2.病院に行って診断書(精神機能の障害について)を書いてもらう
  →これが一番どうするのか分からないのではないでしょうか、僕もそうでした。
   僕は幸い薬を月に定期的に薬をもらいに行く町のお医者さんがいたので、
   事前に電話で確認して書きますよ、とのことだったので手数料3000円で書いてもらいました。
  →この診断書について複数言語の登録でも一枚でよかったです。

 3.合格証のコピー

 4.登録料の入金と領収書のコピー
  申込用紙をウェブサイトからダウンロードすると、
  申し込みができる金融機関が書かれているので該当の銀行に行って2言語分を入金
  (知りませんでしたが公金は手数料が要らないのですね、、助かりました)
  
  その領収書のコピーを取っておく。
  これを私は忘れていました・・・(「写し」でなく「コピー」と書いてくれていれば分かりましたが・・)
  
 5.証明写真の準備
  これも危うく1言語分の2枚だけでいいかと思ったのですが、、
  後で気づいて2言語分の4枚を持って行ってそれが正解でした。

大阪府庁といえば谷町四丁目のイメージだったのですが、実際にはニュートラムで行く大阪の南港でした。(さきしまコスモタワー)
ATCにはイベントで何度か行ったことがありますが正直行くには不便なところです。

窓口というものはなく直で担当の方のデスクに行くような感じでしたが、そこで登録処理をしてもらいました。
ダブルチェックでお二人担当の方が確認しました。
そこで伝えられたのは、5年ごとに通訳案内士の研修に参加してくださいということ。
それから、自分でも登録ができるが、業者向け?の仕事紹介サイトに自分の情報を載せるかどうかを聞かれました。自分のどんな情報が載るのか分からなかったのと仕事をする予定はないので、「自分でします」とお伝えしました。

およそ一月後に、英語と中国語の二枚の免許証が簡易書留で届きました。
届くとうれしいものですね。